おいしいを感じる言葉
Sizzle Word 2025

おいしいモノを食べた時、おいしさをどう感覚し、
どういう言葉として知覚し、記憶しているのでしょうか。
いま、どのようなおいしさを表現する言葉が
使われているのでしょうか。

「おいしそう」「食べたい」「飲みたい」という欲求を
喚起する言葉、おいしかった感覚を覚えておく言葉、
おいしい感覚を表現する言葉を
“シズルワード”と 呼んできました。

“シズルワード”には、「もちもち」「ジューシー」
「とろける」「濃厚」「うま味のある」「贅沢」
「揚げたて」「焼きたて」など、 数多くの言葉があります。

2003年から継続的に調査を行ってきました。
シズルワードの現在の姿とその変化を知っていただくために、
『おいしいを感じる言葉 SIZZLE WORD 2025』
の調査結果の一部をご紹介します。

シズルワードの4つの表現

“シズルワード”には
食に関わる修飾語で、単語や簡単な字句のことです。
「もちもち」「ジューシー」「とろける」「濃厚」
「うま味のある」「贅沢」「揚げたて」など、
数多くの言葉があります。

シズルワードは大きく4つの領域にわけています。

  • 味覚系:味覚・嗅覚に関わるワード
  • 食感系:触覚・聴覚に関わるワード
  • 情報系:食材・調理・製法・流儀に関わるワード
  • 感情系:情緒・気分・エモーションに関わるワード

味覚系、食感系、情報系の3領域で2003年から調査してきました。
そして、2020年から感情系を加えた4領域で行っています。

4領域のランキング

味覚系

「うま味のある」「旨みのある」「ダシの効いた」
が味覚系のトップ3

味覚系の1位は「うま味のある」です。
続いて、2位「旨みのある」、4位「旨味のある」がトップグループに並びました。
今年は同じ音の文字による違いを検証するため
”うま味””旨み””旨味”を入れています。
表現の違いによって、全体的な選好率にも微妙な違いがでています。

”うま味””旨み”と比較すると、「コクのある」はやや低く9位。

〈うま〉〈コク〉を組み合わせた表現違いの〈うま〉〈コク〉ワード、
5位「こくうま」、6位「コク旨」、7位「コクうま」は
「コクのある」単独よりも高い順位に位置しています。

〈うま〉〈コク〉ワードでは、10位「極うま」もトップ10入り。
表現違いを含めると、〈うま〉〈コク〉ワードがトップ10をほぼ占めています。

〈うま〉〈コク〉に並ぶワードとしては他に、
3位「ダシの効いた」や8位「濃厚」の〈濃〉系がトップ10にランクイン。
その下には同じ〈濃〉系で〈深〉を使ったワード、
13位「味わい深い」、16位「深みのある」が入ります。

11位「やみつきになる」、18位「クセになる」は
感覚によって脳の働きでおいしさを感じている言葉です。

12位「香ばしい」、17位「風味豊か」、19位「香り豊か」、
20位「風味のよい」の嗅覚に関わる言葉もトップ20にランクインです。

味覚系シズルワード トップ20

食感系

「ジューシー」「もちもち」「サクサク」
が食感系のトップ3

食感系の1位は「ジューシー」です。
「ジューシー」は肉汁が溢れるなど、
汁や液体の動きや広がりを楽しむ感覚です。

〈じゅ〉という音感のつながりでは、
焼ける様子や汁気の広がりを表す15位「じゅわっと」、
20位「ジュージュー」も上位にあがってきていて
〈じゅ〉が使われる言葉の料理や食べ物、意味する感覚は広がっています。

食感系の中心であるオノマトペは感覚をそのまま言葉にしたもので
擬音語と擬態語に分けられます。

2位「もちもち」、4位「もっちり」、5位「もっちもち」、6位「もっちもっち」
10位「もちっと」の〈もち〉系擬態語がトップ10に多く入っています。
今年は「もちもち」の強調表現「もっちもち」「もっちもっち」を加えていて
その違いを比較しています。

3位「サクサク」、14位「サクッと」は、〈さく〉系擬音語です。

オノマトペでは、上記〈もち〉〈さく〉のほかに、
7位「とろける」、8位「とろーり」の〈とろ〉系擬態語、
〈ふわ〉〈とろ〉 の複合語で9位「ふわとろ」、
〈かり〉系擬音語の17位「カリッと」も上位です。

オノマトペ以外では、身体の部位を使った言葉もあります。
〈口〉を使った「口どけのよい」が12位、「口当たりのよい」が18位で
トップ20にランクインです。

食感系シズルワード トップ20

情報系

「本格」「焼きたて」「贅沢」
が情報系のトップ3

素材・製法・流儀など、
食材や調理に関わる言葉が情報系です。

情報系の1位は「本格」です。
3位「贅沢」、4位「絶品」、7位「ご褒美」、
12位「こだわりの」、15位「プレミアム」、16位「本場の」など
食品・調理の製法や位階・質の高さを表す
流儀・様式の言葉がトップ20に多く入ります。

2位「焼きたて」、5位「揚げたて」、11位「炊きたて」は
調理・製法に関わる言葉で、
”出来立て”のおいしさの時間価値を表しています。

6位「新鮮」、8位「鮮度のよい」、9位「季節限定」は
食材や素材の新しさや、季節が限定されることの価値を表す言葉です。

料理の量感や豊かさを表す言葉では、「具だくさん」が13位に入ります。

情報系シズルワード トップ20

感情系

「幸せの」「ご褒美」「気分があがる」
が感情系のトップ3

感覚ではなく感情、
“おいしい” を食べることで得られる情緒や気分です。
おいしいは「快」、まずいは「不快」。
おいしい飲食は「快」を通じて、気持ち、気分や情緒を動かします。

感情系の1位は「幸せの」です。
おいしい感覚をそのまま感情にすると「幸せ」になります。

2位は「ご褒美」。
6位「至福の」、8位「贅沢」など
“贅沢感”を表すワードが上位に入ります。

3位「気分があがる」、 4位「元気が出る」、 5位「満ち足りた」
9位「気分が高まる」は、気持ちを上げる“アップ”系の感情です。

これらアップ系と対になるのが、
気持ちを落ち着かせる“鎮め”系ワード。
7位「癒される」、10位「ほっとする」、11位「心地よい」
12位「リラックス」が上位です。

感情系シズルワード トップ20

3領域の時系列変化

ここでは2004年~2025年までの
20年間の時系分析からト、レンドの変化を見ていきます。

味覚系の変化

「うま味のある」「コクのある」が味覚系トップグループ
「濃厚」「リッチ」はアップトレンドから成熟へ

味覚系の2025年トップは「うま味のある」。
3位「コクのある」とともに、この20年間トップ4を維持している
味覚系を代表するシズルワードです。

20年前には7位でしたが徐々に順位を上げて、
2015年以降はずっと2位を維持しているのが「濃厚」です。
「濃厚」に近い言葉で、「リッチ」が同じように順位を上げていましたが
2020年の11位をピークに横ばいが続いています。

「濃厚」「リッチ」の周辺語では、
この数年は〈脂〉系が下位からアップしてきていて、
2025年は14位「脂の乗った」、16位「こってり」がトップ20にランクイン。

「濃厚」 「リッチ」のピークは過ぎても、その周辺語の多彩化によって
味覚の濃厚/リッチ化のトレンドは継続しています。

そのほかの言葉では、「やみつきになる」が
2015年の13位から2020年は4位へと急アップしましたが、
2020年をピークに横ばいです。

2004年上位の「あっさり」「さっぱり」が長くダウントレンドでしたが、
この数年は反転・復活の兆しも出ています。

また基本味の5味辛系では、〈甘〉系の関連語が下位からアップ、
2025年は「スイート」が13位に入りました。
若い人を中心に”甘さ”をポジティブに受容する動きが出ています。

一方、〈辛〉系の「スパイシー」は長期的にダウン継続です。

味覚系のランキングの変化:2004~2025年

食感系の変化

「ジューシー」がトップ継続
「サクサク」「カリカリ」「ザクザク」がアップトレンド
アップする擬音語、清音から半濁音・濁音へ

2025年の1位「ジューシー」と、
これに続く「もちもち」「サクサク」「もっちり」「とろける」は
2010年~2025年の15年間、順位は違えど不動のトップ5です。

2004年は「ほくほく」「コシのある」がトップ5に入っていましたが、
2010年、下位から入れ替わりで「もちもち」「もっちり」が1位3位に入ると
その後はやや順位を落としつつも、 「もちもち」「もっちり」がトップ5を継続しています。

またトップ5の中では下位に位置していた「サクサク」が2025年に急アップ。
「ジューシー」に次ぐ2位にランクインしました。

噛んだ時の軽快な食感を表すオノマトペはここ数年のアップトレンドで、
「サクサク」「サクッと」「カリッと」の清音擬音語が大きくアップ。
さらにその下からからは、「パリパリ」「ザクザク」の半濁音・濁音擬音語が
アップしてきています。

擬音語がアップする一方で、順位ダウンしているのが擬態語です。

〈ふわ〉系擬態語の「ふわふわ」「ふわっと」は、
2010年の10位17位がピークで、その後は順位を落としています。
〈とろ〉系擬態語の「とろーり」は2010年がピークでその後は横ばい、
「とろとろ」も2020年をピークに順位ダウンです。

軽くてやわらかい感覚や様子を表す擬態語は、ダウントレンドが続いています。

食感系のランキングの変化:2004~2025年

情報系の変化

「贅沢」が不動のトップ
「贅沢」「絶品」「本場の」、”流儀”の言葉がアップトレンド
「出来立て」「とれたて」のおいしさ価値はダウン

情報系の1位は「贅沢」。
「贅沢」は<食の流儀>を表す言葉で、
情報系の中でも大きく変化してきた言葉です。
とくに2004年からの10年間で大きく伸び、
2015年に初めてトップに入った後は不動のトップであり続けています。

<流儀>の言葉では「絶品」も
「贅沢」ほど大きくはないものの、後を追うように順位を上げていて、
2020年に「贅沢」に次ぐ2位に入ると、その後も上位を継続しています。
また「本場の」は2010年、「こだわりの」は2015年を底に、
以降は2025年まで順位を上げ続けています。

調理・製法では、“出来立て”のおいしさ価値を表す
「焼きたて」「揚げたて」「炊きたて」が2010年にはトップ3を独占していましたが
その後は上位は維持はしているものの、やや順位を落としています。

食材や素材の言葉もダウントレンドです。
食材の新しさの時間価値を表す「新鮮」は、2004年2位から徐々にダウン。
「天然の」「産地直送」の食材の“自然性”を表す言葉も順位を下げていて、
食材や素材への関心は全体に減退しています。

情報系のランキングの変化:2004~2025年

調査概要

 

調査方法 インターネット調査
対象者 15~69歳男女
調査期間 2025年5月16日~22日
サンプル数 1,800人
調査地域 全国
調査に使用した
食べ物に関する表現
495語
味覚系表現116語 食感系表現149語
情報系表現147語 感情系表現83語

報告書目次

商品仕様

報告書 1冊(160頁)
データCD 1枚

<データCD内容>
報告書PDF
クロス集計表(エクセル)
時系列データ(エクセル)
価格 165,000円(消費税込)

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